実は【集中力】のない子どもはいない!って本当!?
ある1日の出来事です!私たち大人の視点を少し変えるだけで、こどもたちは劇的に変化します。
今からお話しする内容は、過去の私の実体験に基づいた話になります。
教室にA君という生徒がいました。彼は、学校の面談でも先生から度々「集中力がない」「いつも手遊びばかりしている」と言われるタイプの生徒で、確かに塾でも注意力散漫でした。
・他の人の物音が気になってしまう。
・他の人への解説が気になってしまう。
・他の人との雑談に入ってきてしまう。
・目の前のことに集中できず作業になってしまう。
・つい筆記用具で遊んでしまう。
教室全体を見まわしているとよく目が合うのがA君でした。顔を上げて、こっちを見てニコニコしている。きっと今までに彼は何度も、いろんなところでこう言われてきたんだろうなぁと想像がつきます。
「集中しなさい!」
僕もついつい言ってしまいそうになります。いや、実際に言ったこともあったかなぁ・・・
そんな私が、「なるほど。集中はしているんだな」と気付いたのは、それからだいぶ経ってからのことでした。
そう、A君も【集中】していないわけではなかったんです。ただ、【集中力】を向けている方向が違うということだったんです。
そもそも大人も子どもも、人間の集中力などというものは何時間も続くものではないですよね。みんな限りある【集中力】をほぼ無意識的に配分して生きているんです。分かりやすく数値化してみましょう。
ある人は自分の持っている100の集中力を、目の前のことに50使い、残りの50は使わずにしまっておく。
いわば、一方方向集中型ってやつです。(ネーミングセンスはお許しください(笑))
さらに別のある人は、集中力を目の前のことに30、残りを周囲に各10ずつくらい向ける。
さらに別のある人は、目の前のことに10、残りを周囲に各20といったように向ける。特に、動きのあるものに注目し、集中力の流動が激しい。
じつはこれ、良いも悪いもない。これらは「集中力の使い方」の違いというだけなのです。
ただ、勉強においては、後者になればなるほど不利に働くということが容易に想像できますね。
もちろん、同じ人でも時と場合によって集中力の使い方は異なります。分かりやすい例を挙げれば、危険を感じるような場所では、誰しも注意力散漫になるのは当たり前です。いろいろなものに注意をする必要があるからです。ちなみに、念のため申し伝えておきますが、当時のA君がいた教室がデンジャラスだったというわけでは決してありませんからね。(笑)
他にも、個人の特性として不安を感じやすかったり、自己肯定感が低かったり、慣れない場所にいるときなどは注意力が分散しがちな傾向がありますね。
それでは、もう一度A君のお話に戻ります。彼は、決して集中していないわけではなく、その方向性が違うだけだったのです。
だから、僕はこう声をかけた。
「集中しなさい!」ではなく、「そんなに集中せんでいいよぉ!」と。
「大丈夫だから。ここは急に発表することもないし、あてられることもないからさ。みんな味方やでぇ!」
「いきなり、何で話聞いてないの?とかみんなの前で間違えるとかないから不安にならなくてOK」
「もうそんなに、周囲の目を気にしなくで大丈夫だからね。」
こういった声かけで、「目の前10、右15、みんなの様子を見て回る私35、左20、近くで生徒に指導している先生20」といった感じのA君の集中力の向きを、「目の前10」だけにしたのです。
効果はテキメンでした。
まずは解くスピードが変わりました。速さだけではありません。正答率も良くなり、授業のテンポが変わったのです。顔は上がらなくなった。目は合わなくなった。少しだけ寂しかった。でも、それ以上に嬉しかった。
いつの間にか当初の10の集中力は、20や30へと膨れ上がり、一点に注がれているなと、見ているこちらも分かるような姿勢になっていました。
A君は変わりました。
現象には理由があって、それを掴み、活かすことが大切だということをA君から教わりました。
ありがとね。